ブロークバック・マウンテン

 ずっと映画館で見られなくて悔しい思いをしてたんだけど、やっとの事でレンタルも開始されたことだし早速観てみた。アメリカでいうところのセクシャルマイノリティの立場って、日本でのそれよりずっと厳しいものかと思ってたんだけど、こういう映画をオスカーに選ぶあたり、もしかしたらある意味寛容なのか… なんて暢気に考えながら観始めた。でもそれはセクシャルマイノリティ云々の次元を越えて、純粋に映画として評価されていた「だけ」なんだな、と思い知らされた(もちろん良い意味で)。
 始まってまず映像の美しさに息をのむ。うわぁ…なんてアメリカ的、まるで西部劇の世界。それもそのはず。本作は伝統的な西部劇のスタイルを踏襲した上で、普通ならネタのような、ちょっと考えられないカウボーイ同士の愛を描いているのだ。
 自分らしく、あるがままで自由なジャックと、無骨で素朴、そして陰のあるイニス。この二人のコントラストは、ゲイからしてみれば、もしかしたらありがちで分かり易い設定なのかもしれない。だけれどそんなことは重要ではない。
 ただただ圧倒される大自然と、その広大な環境に包まれるような楽園での毎日。そしてそこで生まれる感情。それは抑圧された限定的な環境(刑務所なんかの)で生まれる、一時的なものではなく、純粋に男として、人間として慕い、愛するという真っ直ぐなものだ。これは性別や指向を越えて、人間が感じることが出来る、そして語り尽くされてきた普遍的なものだ。なのにどうしてこんなに切ないんだろう。
 自分はいつの間にか(あるいは初めから)自分自身の恋愛を重ね、おかしくなりそうな位に心を乱されていた。夢みたいな時間と場所は終わり、突然訪れる別れ。四年という空白を越えて、再会したときの物言われぬ感情。システムと環境と、そして愛するが故に障害になってしまう家族の存在……。あとは、観ていない人には是非自分自身で感じて欲しいと思う。これ以上は何を言っても蛇足になってしまうだろうし。
 最後に一つだけ。一番共感できたのは、互いの服を重ねるというもの。こうすることによって一つになれる。これには本当にやられてしまった*1。「マイ・プライベート・アイダホ」とあわせて、自分のとっての「人生の映画」になった。

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*1:自分も同じことをしていたから…