「ランド・オブ・プレンティ」に見る、既視感ありまくりのカルト宗教国家の構造

ランド・オブ・プレンティ スペシャル・エディションランド・オブ・プレンティ スペシャル・エディション
ヴィム・ヴェンダース マイケル・メレディス ミシェル・ウィリアムズ

角川エンタテインメント 2006-05-12
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 ★★★★☆
 当然といえば当然なのかもしれないが、これは日本人にとっても非常に見るのが辛くなるような、痛烈な批判が含まれている作品なんだろう。
 ただ真っ直ぐに目の前の人間や事象を受け容れる主人公に対して、自ら心身ともにベトナム戦争時の後遺症に苦しむ叔父。叔父の姿はまんまアメリカという国の姿に他ならない。宗教や人種など人間を構成するある一面、非常にわかりやすい特徴をつかって「敵」を作りだし、愚衆共を騙して自ら(もちろん最早国家と一体化してしまった企業も)の権益のために暴走する、世界一「豊かな国」*1アメリカのことだ。そして実はそうやって、自らを蝕んでいる貧困などの問題は見て見ぬふり。表面的には、数字に表れる部分だけは「豊か」であればそれでいいのだ。国家(政治を行う連中と企業ども)が今現在、自分たちが物質的に、資本主義の価値観の中で力を持ち潤いさえすればそれで良い。(一応建前は)国家を構成している愚民どもや国の将来なんてどうでも良いのだ。
 9.11以降、本質的な真実を訴えようとした映画やドラマは多かったけど、この作品は淡々と、そして冷静に真実を映し出している。アメリカの民衆は愚かなのか、どうしてこの現状になにもしないのか。そう思った瞬間に気付く、自分はどうなのかと。この映画が描いている「豊かな国」というのは、日本のことでもある。最近のニュース一つ取っても、やれ格差だ、教育改革だ、自殺は減らないと滅茶苦茶病んでる。その反面、景気は上向きいざなぎ超え、GDPは7期連続でプラス、この調子で国引っ張ってくれる企業に対して法人税引き下げちゃおうってか?社会的弱者完全無視の障害者自立支援法を初めとするクソ悪法をつぎつぎに成立させ、さらには既存法では飽きたらず憲法まで改悪しようときた。仲良くみんなで同じ色に染まって右習えですか?まるでアメリカっていう宗教だよ。こんなん見る方向変えれば北朝鮮と大差ない。*2
 この作品での主人公の少女は、何も知らない、何にも染まらない「未来」の象徴として描かれていると思う。泣くのは他でもない自分たちの将来、子ども達の未来。


 それにしても、「ブロークバック・マウンテン」でも光ってたミシェル・ウィリアムズ。なんというか、透明感のある無垢な存在感!この役を見事に演じてたし、ハマリ役だったと思う。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のセルマことビョークに通じるものを感じたのは、雰囲気だけのせい??w

*1:この表現=「ランド・オブ・プレンティ」と聞いて一番に思い出したのは、安倍晋三の「美しい国」だったり。美しいとか豊かとか何をもって言ってるのか…

*2:日本では国家に丸め込まれたマスコミという企業を使っての一大洗脳キャンペーン…そういや昔から変わってないか…。ジャーナリズムってなんのことを指すんだろうね。絶望しそうになるわ…