エリ・エリ・レマ・サバクタニ

エリ・エリ・レマ・サバクタニ 通常版 [DVD]

エリ・エリ・レマ・サバクタニ 通常版 [DVD]

予め映画に関する情報を極力見聞きしないようにしていたけど、観てみてこの映画が「音」ってものを主題に描かれていることに気付くまでにあまり時間がかからなかった。何よりも映画館で観られなかったことが一番の後悔だったけど、それを抜きにしてみると、まずは景色だった。
冒頭の砂浜のシーンで、どこか懐かしいような、あの年中重苦しい太平洋のイメージ…どこなんだろう、と。その後の湾曲した道路や、崖っぷちの道路を見て理解した。これ北海道だ。しかも道東か道南だ。映画はどんどん進む。設定や内容は正直重要じゃないんだろう。音を打ち出すためにとってつけたような、意味を持たない設定や、美術。…そして騒音。うるさい。とんでもない…不快だ。執拗に繰り返される演奏シーン、音、爆音、騒音。ロケーションが自分の生まれた町やその近辺だけあって、画ばっかりに神経がいってしまい、普段から郷愁に囚われている自分には地獄。
神経が音に集中できず、ノイズを遮断する事も、それに同調することも出来ずに困惑した。なんて映画…。
だけど終盤の演奏シーンは何とも不思議に、ノイズをもっと欲するような不思議な欲望のような、そしてまさに自分が生まれて育った町の、あの場所でそれがなされていることの奇妙だけれど、愛おしい感情に包まれて半分恍惚状態だったかもしれない。
このノイズをどう評価すれば…と考えると、正直難しいし、音楽としてのノイズというジャンルも正直苦手だったりするし…。ただぼんやり鑑賞するに相応しくない映画は久々で、それだけでもやられた!という感じだった。
それにしても、自分の故郷がこんな映画になるなんて、しかもこんなに美しい映像で、自分の記憶以上に。改めてその価値を見出された感じだった。青山監督、ありがとう。
ますます帰りたくなった。やっぱり骨を埋めるのはあの土地しかないんだと痛感した。